放浪作家が見出した霊的日本
著者の小泉八雲は、本名をパトリック・ラフカディオ・ハーンといい、1850年にギリシアで生まれ各国を放浪したのちに、日本に帰化した新聞記者であり作家でもあります。
外国にルーツを持つ八雲は最終的に落ち着いた日本をこよなく愛し、この国の文化をふかく探求し、その成果を出版物を通じて世界に紹介した人物です。明治期に身を置きながら、長い歴史の中で培われた日本の霊的文化を高く評価し、同時に欧米文化をとりいれ急速に近代化するなかでその伝統が失われていく状況に危惧を抱いていました。
八雲は精力的に各地に伝わる民話や風俗、伝承を収集し、外側からの客観的な視点とわかりやすい言葉で自身の著作として残しましたが、それらは英語で書かれ、主に欧米の読者を意識したものです。
では、われわれ日本人の読者に読む価値があるかといえば、じゅうぶんにあると思います。というのも、欧米の生活様式になれた現代人にとっては、むしろ予備知識がなくとも理解できる彼の著作は受け入れやすいと思うからです。また、日本人の訳者によって翻訳の過程で適切に言葉が選ばれているのもありがたいです。ただ、距離の単位に<マイル>が使われていたり、作中に登場する超常的な力が<魔法>と表現されたりしているのは作風として大目に見てもよいと思います。
本書は9つの著作から、短編形式の48の代表作が訳者の解説付きで収録されています。中でも『怪談』の収録作品は有名で、耳なし芳一やろくろ首、雪女などは広く知られています。しかし、実際には不可思議な怖い話ばかりではありません。ありえない恋愛を成就する話や、美しい芸者の半生を描いた話、重罪犯が被害者の子の前で改心する話なども出てきて、言い伝えであれ実話であれ、小泉八雲の目を通じて今では失われた古き良き日本の姿を垣間見ることができます。ぜひ、ご一読を!
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