《奇妙な味》の代表作
ロアルド・ダールはノルウェー系イギリス人作家で、ミステリー短編の名手として知られています。また、児童文学作品も数多く手掛け、なかでも「チョコレート工場の秘密」は映画化もされた人気作です。
ミステリー短編の中で読むべき作品はやはり、本作だと思います。ダールのミステリー作品は、いわゆる‘奇妙な味’と呼ばれる一時期欧米のミステリー界で一世を風靡した作品群のひとつです。通常のミステリーのように名探偵や刑事が登場して事件を解決する明確な謎解きではなく、まさしく奇妙としか言いようのない独特な雰囲気を醸し出した作風なのが特徴です。
本作の中でとくにおススメしたいのは、「味」と「南から来た男」でしょう。どちらの作品も賭け事を題材にしており、たとえば「味」は、ある男が美食家と勝負し、ワインの銘柄を当てなくてはならないという話。たかが、ワインの味見と思うなかれ。スリルあふれる展開と最後の鮮やかなどんでん返しが魅力的です。
もうひとつの「南から来た男」もそうですが、作中の登場人物たちは取るに足らないきっかけで、いつの間にか逃れられない状況へと置かれ、大切な何かを賭ける羽目に陥ってしまいます。それがかえって恐怖心をあおり、読者に最後までページをめくらせる面白さにつながっていると思います。
本作は短編15作がおさめられており、どの作品も現実にありえそうな世界に住む、どこにでもいそうな人物たちを描いた物語です。にもかかわらず、その結末は誰もが驚愕する方向へと向います。そして、本を読み終えた後〈あなたに似たひと〉というタイトルの深い意味を知り、ゾッとすることでしょう。
ロアルド・ダール作品は全般的に読みやすいのも特徴で、訳者はその筆者の表現力をうまく日本語に翻訳していると思います。海外のミステリーになじみの薄い方でもきっと本作にのめりこめるはずです。ぜひ、ご一読を!
こちらは新装版(田口俊樹訳)
こちらは旧版(田村隆一訳)
コメント